薄桜鬼 土斎メイン BL小噺 声優関連徒然日記 詳細はご挨拶からどうぞ
05/19
2025
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07/17
2009
公式の七五三に肖りup。
まさかの風間さま初登場がこんなとは私も予想しなかった・・・
こねたなんだからもっとさらっと書きたいのにどうしてこんなに長くなるのか・・・
まさかの風間さま初登場がこんなとは私も予想しなかった・・・
こねたなんだからもっとさらっと書きたいのにどうしてこんなに長くなるのか・・・
莫迦な子ほど可愛いというのは本当だ。
新選組副長土方歳三は目の前の状態に頭を抱えた。
子供。推定5歳児。
1人の例外を除き血気盛んな猛者の集いである新選組屯所内においては文字通り異端児であるその子供は全く寸法のあわないぶかぶかの着物に包まれて土方の膝の上で夢の中。大して子供好きと言う訳でもない土方ですら目を奪われる程に愛くるしい。ふにふにと柔らかそうな頬っぺたは薔薇色。浅い寝息を立てる桜の花びらのような唇は無防備に薄く開かれている。じっと見ているとなにやらいけない気持ちになりそうだ。それでも
子供特有の温かな体温を預けられ、小さな手できゅぅっと着物を握られていてはその信頼を裏切る気になど到底なれない。
「しかし・・・どうしたものかなぁ。」
「別にこのままでもいいじゃないですか。かわいいですし。」
「その時は僕が面倒見ますよ。ちゃんと責任取りますから安心していいですよ。土方さん。」
「お前等ふざけてないでどうやったら元に戻るのか考えろ!!」
事の始まりは山南と沖田の2人。
山南の作る試薬が完成したがその効果を試す実験体に適した者が見つからない。
羅刹のことは機密事項であり、またその存在を知る者も自ら進んで実験台になりたがる物好きなど居る筈もない。そこで目をつけられたのが斎藤である。おもしろそうだからと山南の誘いに乗った沖田の2人は石田散薬を餌に斎藤に話を持ちかけた。曰く、羅刹の実験はひいては新選組全体のため。実験には万全を期しているし、もしもの時には石田散薬がある。これさえあれば何があっても斎藤君なら大丈夫だろう。君の他に頼める人が居ないんだ。頼みます。と、いう流れで斎藤は押し切られたらしい。
莫迦野郎と説教の1つもして遣りたい処を土方はぎり、と唇を噛んで耐えた。
斎藤の性分を思えば仕方無いことだ。組の為、石田散薬の効能の真否、加えて上司である山南に頭を下げられたとあっては無碍に断るなど出来るはずも無い。
思惑の儘に山南の実験薬を飲みその結果がこの様だ。
勿論、山南は羅刹に関する薬を作りたかったのであってこのような結果を望んだ訳ではないのだが。
更に悪いことに意識まで幼児化しなかった斎藤は当然のように石田散薬を飲んだ。効き目など全くない薬を一途に信じて土方の教え通りに熱燗で飲み干したのだろう。いつもの調子で。結果は推して知るべし。
部屋の騒ぎに土方が押し入ったのは丁度この時だった。
開口一番に五月蠅えと怒鳴る前に居るはずもない子供が目に飛び込んできた。初めて見るのに何処か見慣れた子供。その違和感に気付く前に子供が覚束ない足取りで駆け寄ってきた。そして土方の元に辿りつく間際、自分の着物に足を取られてすっ転びそのまま気絶するように夢の中だ。
「まぁ、元に戻す方法が無いこともないんですがねぇ。」
「なんだよ。山南さん、あるなら勿体振らねぇで早く元に戻してくれ。」
「うーん。気は進みませんが土方君から直々に頼まれては断りにくいですね。仕方ありません。では・・・」
そう言って斎藤の顔へと自分の顔を寄せる山南。何をするつもりだと土方が不振がる間に当の斎藤はんぅ・・・と愛らしい寝息と共に寝返りを打ち土方の胸へと顔を埋めた。
「失敗しちゃいましたね。」
「あんた・・・今、こいつに何するつもりだったんだ。」
「何って決まってるじゃないですか。接吻けですよ。」
「だから何で、んなことする必要があるかって訊いてんだよ!」
「おや、君ともあろう人が知らないとは・・・
こういった時に接吻けで元に戻るのは古来からの仕来りでしょうに。」
「生憎だが俺はそんな話聞いたことねぇよ。」
「まぁ、いいじゃないですか。土方さんがやらないっていうなら僕が代わりに務めさせてもらいますし。」
「総司・・・!」
「そうですね。本来ならば王子の接吻けが1番なんですけど、まさかそんな人が都合よく居る筈ありませんし。
土方君も嫌とあっては沖田君にお願いする他ありませんね。」
「待て。俺は嫌とは「まっかせてください。一君がちゃんと元に戻るまで離しませんから。」
「だから人の話を、」
「その必要はない。」
土方の言葉を遮って突如現れた男。風間千景。
更なる波乱の予感に近藤は深い溜息を吐いたがそれに取りあう者は残念ながら1人も居ない。
「畜生。よりによってこんな時に・・・何しに来やがった!?」
「ふ・・・威勢がいいな。わざわざ来てやったというのに。」
「誰もお前に来て欲しいなんて頼んで・・・ってまさか・・・」
「王子が接吻ければ元に戻るんだろう。」
「だからって誰がお前なんかとさせるか!」
「一君を元に戻すのは僕の役目だって言ってるでしょ?」
「どうやらこうして話していても埒が明かないようだ。」
「そうだね・・・やっぱり決着は刀でつけないと。」
「総司・・・!?お前、まさかここでやりあうつもりじゃ・・・
歳も止めてくれ!このままじゃ部屋が・・・!」
「近藤さん、こいつは任せた。」
「は?ああ、斎藤君・・・ってお前も参戦するのか、歳!?」
近藤の制止すら耳に聞かず土方は鯉口を切った。
ここに土方、沖田、風間による血で血を洗う三つ巴の幕が切って落とされた。
どうしてこんなことになったんだ・・・
残された近藤はとりあえず預けられた斎藤を抱え部屋の片隅へと避難した。
もし、斎藤に傷の一つでもつけようものならどうなるか・・・考えたくもない。
同じく見物に徹する山南を窺がえば、浮かべた笑顔の瞳の奥が笑っていない。
近藤は気付かれぬ様、それでも出来るだけ素早く目を逸らした。
その間にもきぃんっと刃を打ち合う甲高い音は絶え間無く続いている。
本来ならば土方と沖田の二人掛りで風間を挟撃すればいいものを、
隙さえあれば互いが互いに必殺の一撃を繰り出す。
心なしか二人の髪が白く見えるのは気のせいだろうか。
土方と風間の鍔迫り合い中に沖田の十八番である三段突きが容赦なく襲う。
寸での所で身を躱した土方の身代わりに派手な音を立てて花瓶が砕けた。
いや、花瓶だけではない。既に部屋の惨状は目を覆うばかりだ。
これだけの騒ぎを起こしているというのに何故誰も様子を窺がいに来ないのか。
例の三人組はいつものように島原として、平隊士が幹部部屋に易々と来たがる筈も無く、
残るは・・・そこまで考えて近藤は大きく頭を振った。
まさかこのような騒動に彼女を巻き込むわけにはいかん。
決意を新たに未だ稚い寝息を立てる斎藤を抱えなおすその時、
ちりんっ
と、涼やかな鈴の音とともに1匹の黒猫が乱入した。
猫は振り翳される白刃をするりと抜けて近藤の元・・・いや、斎藤の元へ擦寄る。
放たれる殺気、響きあう剣戟の音にも構わず眠り続ける斎藤の頬をぺろりと舐める。
「ん・・・・・・ねこ・・・?」
漸く目を覚ました斎藤。とはいえ部屋の惨状にも白熱の色を増すばかりの三人の鬼人たちによる死闘にも気付いた様子はない。寝起きのためか、それとも未だに酒が抜けていないのかぽやんと潤んだ瞳は、はたはたと揺れ動く黒猫の尻尾に釘付けだ。猫は伸ばされた手に逃げるでもなく唯、されるが儘に撫でられている。今にもゴロゴロと喉を鳴らしそうな様子に斎藤は邪気無く微笑み、そのしっとりと湿った鼻にちゅっと可愛らしい音をたてて口付けた。
その瞬間―ぱちりと瞬く程の刹那の間に斎藤は何事もなかったかのように元の姿に戻っていた。
そして、斎藤の前に広がる光景は宛ら、阿鼻叫喚の地獄絵図。
散乱した家具調度にずたずたに切り裂かれた襖や障子。
何より突然の鬼の襲来に土方と沖田の二人が応戦しているのかと思えば、どうやらその二人の間にも火花は散っているようである。一体どういう訳なのか。だが、状況は呑み込めずとも加勢するよりあるまい。
そして斎藤が刀に手を掛けたとき、
「斎藤君、元に戻ったんだな!良かった、ほんっとうによかった!!」
言葉と共にぎゅぅと近藤にしがみつかれる。気付けば斎藤は近藤の膝の上に乗り掛かり、剰え抱き締められている。斎藤は更に混乱した。土方たちに加勢したいが、如何やら自分の身を案じてくれているらしい近藤を無碍に振り払うことも出来ない。どうしたものかと視線を彷徨わせれば部屋の隅にはこの混乱の中でもいつもと変わらぬ微笑を浮かべる一人の男。
「山南さん、此れは一体どういうことですか!?」
「ああ・・・矢張り覚えてませんか。仕方ないですね。ですが今更説明する暇などありませんし・・・
なかなか面白い見物ではあったんですが、そろそろ御開きにしましょうか。」
斎藤の問いに答にならぬ返事を返し、山南は大きく拍手を打った。
「みなさーん、もう争う必要はないですよー。」
山南の呼掛けが届いているのか三人の動きは止まらない。
「君たちの目的の斎藤君の唇はもう奪われちゃいましたよー。」
「な!?」
ぴたりと硬直する三人に対し、驚きの声をあげる斎藤。
「冗談・・・ですよね。」
「こんなときにつまらない冗談など言うと思いますか?」
「・・・なら・・・誰と・・・」
部屋には死闘を演じていた土方、沖田、風間と隅に佇む山南。
そして斎藤を抱かかえる近藤と1匹の黒猫。
ここから斎藤が導いた結論は、
「まさか・・・局長、と・・・?」
斎藤の言葉にピクリと反応する三人。刮と見開いたその瞳は一様に紅い。
「近藤さん・・・確かに俺はあんたに斎藤を任せたが・・・何もそんな事まで頼んだ覚えはないぜ・・・?」
「まさか近藤さんまで狙ってたなんて・・・流石に僕も気付かなかったですよ。」
「漁夫の利を得るとは小賢しい真似をする。だが、そんなことをして只で済むとは思っていないだろうな。」
「え!?ちょ、歳?総司!?違っ・・・誤解だ!」
凄まじい殺気を立ち昇らせる三人を前に助けを求めるも、頼みの斎藤は赤面し固まっている。そして騒ぎの発端である山南は、どうせ面白がっているのだ。助けてくれる筈が無い。
そして、斎藤の足元で我関せずと蹲る猫の鈴がちりりと鳴って―第二幕が始まった。
「『問答無用。』ですよ。」
騒動はまだまだ終わりそうにない。
新選組副長土方歳三は目の前の状態に頭を抱えた。
子供。推定5歳児。
1人の例外を除き血気盛んな猛者の集いである新選組屯所内においては文字通り異端児であるその子供は全く寸法のあわないぶかぶかの着物に包まれて土方の膝の上で夢の中。大して子供好きと言う訳でもない土方ですら目を奪われる程に愛くるしい。ふにふにと柔らかそうな頬っぺたは薔薇色。浅い寝息を立てる桜の花びらのような唇は無防備に薄く開かれている。じっと見ているとなにやらいけない気持ちになりそうだ。それでも
子供特有の温かな体温を預けられ、小さな手できゅぅっと着物を握られていてはその信頼を裏切る気になど到底なれない。
「しかし・・・どうしたものかなぁ。」
「別にこのままでもいいじゃないですか。かわいいですし。」
「その時は僕が面倒見ますよ。ちゃんと責任取りますから安心していいですよ。土方さん。」
「お前等ふざけてないでどうやったら元に戻るのか考えろ!!」
事の始まりは山南と沖田の2人。
山南の作る試薬が完成したがその効果を試す実験体に適した者が見つからない。
羅刹のことは機密事項であり、またその存在を知る者も自ら進んで実験台になりたがる物好きなど居る筈もない。そこで目をつけられたのが斎藤である。おもしろそうだからと山南の誘いに乗った沖田の2人は石田散薬を餌に斎藤に話を持ちかけた。曰く、羅刹の実験はひいては新選組全体のため。実験には万全を期しているし、もしもの時には石田散薬がある。これさえあれば何があっても斎藤君なら大丈夫だろう。君の他に頼める人が居ないんだ。頼みます。と、いう流れで斎藤は押し切られたらしい。
莫迦野郎と説教の1つもして遣りたい処を土方はぎり、と唇を噛んで耐えた。
斎藤の性分を思えば仕方無いことだ。組の為、石田散薬の効能の真否、加えて上司である山南に頭を下げられたとあっては無碍に断るなど出来るはずも無い。
思惑の儘に山南の実験薬を飲みその結果がこの様だ。
勿論、山南は羅刹に関する薬を作りたかったのであってこのような結果を望んだ訳ではないのだが。
更に悪いことに意識まで幼児化しなかった斎藤は当然のように石田散薬を飲んだ。効き目など全くない薬を一途に信じて土方の教え通りに熱燗で飲み干したのだろう。いつもの調子で。結果は推して知るべし。
部屋の騒ぎに土方が押し入ったのは丁度この時だった。
開口一番に五月蠅えと怒鳴る前に居るはずもない子供が目に飛び込んできた。初めて見るのに何処か見慣れた子供。その違和感に気付く前に子供が覚束ない足取りで駆け寄ってきた。そして土方の元に辿りつく間際、自分の着物に足を取られてすっ転びそのまま気絶するように夢の中だ。
「まぁ、元に戻す方法が無いこともないんですがねぇ。」
「なんだよ。山南さん、あるなら勿体振らねぇで早く元に戻してくれ。」
「うーん。気は進みませんが土方君から直々に頼まれては断りにくいですね。仕方ありません。では・・・」
そう言って斎藤の顔へと自分の顔を寄せる山南。何をするつもりだと土方が不振がる間に当の斎藤はんぅ・・・と愛らしい寝息と共に寝返りを打ち土方の胸へと顔を埋めた。
「失敗しちゃいましたね。」
「あんた・・・今、こいつに何するつもりだったんだ。」
「何って決まってるじゃないですか。接吻けですよ。」
「だから何で、んなことする必要があるかって訊いてんだよ!」
「おや、君ともあろう人が知らないとは・・・
こういった時に接吻けで元に戻るのは古来からの仕来りでしょうに。」
「生憎だが俺はそんな話聞いたことねぇよ。」
「まぁ、いいじゃないですか。土方さんがやらないっていうなら僕が代わりに務めさせてもらいますし。」
「総司・・・!」
「そうですね。本来ならば王子の接吻けが1番なんですけど、まさかそんな人が都合よく居る筈ありませんし。
土方君も嫌とあっては沖田君にお願いする他ありませんね。」
「待て。俺は嫌とは「まっかせてください。一君がちゃんと元に戻るまで離しませんから。」
「だから人の話を、」
「その必要はない。」
土方の言葉を遮って突如現れた男。風間千景。
更なる波乱の予感に近藤は深い溜息を吐いたがそれに取りあう者は残念ながら1人も居ない。
「畜生。よりによってこんな時に・・・何しに来やがった!?」
「ふ・・・威勢がいいな。わざわざ来てやったというのに。」
「誰もお前に来て欲しいなんて頼んで・・・ってまさか・・・」
「王子が接吻ければ元に戻るんだろう。」
「だからって誰がお前なんかとさせるか!」
「一君を元に戻すのは僕の役目だって言ってるでしょ?」
「どうやらこうして話していても埒が明かないようだ。」
「そうだね・・・やっぱり決着は刀でつけないと。」
「総司・・・!?お前、まさかここでやりあうつもりじゃ・・・
歳も止めてくれ!このままじゃ部屋が・・・!」
「近藤さん、こいつは任せた。」
「は?ああ、斎藤君・・・ってお前も参戦するのか、歳!?」
近藤の制止すら耳に聞かず土方は鯉口を切った。
ここに土方、沖田、風間による血で血を洗う三つ巴の幕が切って落とされた。
どうしてこんなことになったんだ・・・
残された近藤はとりあえず預けられた斎藤を抱え部屋の片隅へと避難した。
もし、斎藤に傷の一つでもつけようものならどうなるか・・・考えたくもない。
同じく見物に徹する山南を窺がえば、浮かべた笑顔の瞳の奥が笑っていない。
近藤は気付かれぬ様、それでも出来るだけ素早く目を逸らした。
その間にもきぃんっと刃を打ち合う甲高い音は絶え間無く続いている。
本来ならば土方と沖田の二人掛りで風間を挟撃すればいいものを、
隙さえあれば互いが互いに必殺の一撃を繰り出す。
心なしか二人の髪が白く見えるのは気のせいだろうか。
土方と風間の鍔迫り合い中に沖田の十八番である三段突きが容赦なく襲う。
寸での所で身を躱した土方の身代わりに派手な音を立てて花瓶が砕けた。
いや、花瓶だけではない。既に部屋の惨状は目を覆うばかりだ。
これだけの騒ぎを起こしているというのに何故誰も様子を窺がいに来ないのか。
例の三人組はいつものように島原として、平隊士が幹部部屋に易々と来たがる筈も無く、
残るは・・・そこまで考えて近藤は大きく頭を振った。
まさかこのような騒動に彼女を巻き込むわけにはいかん。
決意を新たに未だ稚い寝息を立てる斎藤を抱えなおすその時、
ちりんっ
と、涼やかな鈴の音とともに1匹の黒猫が乱入した。
猫は振り翳される白刃をするりと抜けて近藤の元・・・いや、斎藤の元へ擦寄る。
放たれる殺気、響きあう剣戟の音にも構わず眠り続ける斎藤の頬をぺろりと舐める。
「ん・・・・・・ねこ・・・?」
漸く目を覚ました斎藤。とはいえ部屋の惨状にも白熱の色を増すばかりの三人の鬼人たちによる死闘にも気付いた様子はない。寝起きのためか、それとも未だに酒が抜けていないのかぽやんと潤んだ瞳は、はたはたと揺れ動く黒猫の尻尾に釘付けだ。猫は伸ばされた手に逃げるでもなく唯、されるが儘に撫でられている。今にもゴロゴロと喉を鳴らしそうな様子に斎藤は邪気無く微笑み、そのしっとりと湿った鼻にちゅっと可愛らしい音をたてて口付けた。
その瞬間―ぱちりと瞬く程の刹那の間に斎藤は何事もなかったかのように元の姿に戻っていた。
そして、斎藤の前に広がる光景は宛ら、阿鼻叫喚の地獄絵図。
散乱した家具調度にずたずたに切り裂かれた襖や障子。
何より突然の鬼の襲来に土方と沖田の二人が応戦しているのかと思えば、どうやらその二人の間にも火花は散っているようである。一体どういう訳なのか。だが、状況は呑み込めずとも加勢するよりあるまい。
そして斎藤が刀に手を掛けたとき、
「斎藤君、元に戻ったんだな!良かった、ほんっとうによかった!!」
言葉と共にぎゅぅと近藤にしがみつかれる。気付けば斎藤は近藤の膝の上に乗り掛かり、剰え抱き締められている。斎藤は更に混乱した。土方たちに加勢したいが、如何やら自分の身を案じてくれているらしい近藤を無碍に振り払うことも出来ない。どうしたものかと視線を彷徨わせれば部屋の隅にはこの混乱の中でもいつもと変わらぬ微笑を浮かべる一人の男。
「山南さん、此れは一体どういうことですか!?」
「ああ・・・矢張り覚えてませんか。仕方ないですね。ですが今更説明する暇などありませんし・・・
なかなか面白い見物ではあったんですが、そろそろ御開きにしましょうか。」
斎藤の問いに答にならぬ返事を返し、山南は大きく拍手を打った。
「みなさーん、もう争う必要はないですよー。」
山南の呼掛けが届いているのか三人の動きは止まらない。
「君たちの目的の斎藤君の唇はもう奪われちゃいましたよー。」
「な!?」
ぴたりと硬直する三人に対し、驚きの声をあげる斎藤。
「冗談・・・ですよね。」
「こんなときにつまらない冗談など言うと思いますか?」
「・・・なら・・・誰と・・・」
部屋には死闘を演じていた土方、沖田、風間と隅に佇む山南。
そして斎藤を抱かかえる近藤と1匹の黒猫。
ここから斎藤が導いた結論は、
「まさか・・・局長、と・・・?」
斎藤の言葉にピクリと反応する三人。刮と見開いたその瞳は一様に紅い。
「近藤さん・・・確かに俺はあんたに斎藤を任せたが・・・何もそんな事まで頼んだ覚えはないぜ・・・?」
「まさか近藤さんまで狙ってたなんて・・・流石に僕も気付かなかったですよ。」
「漁夫の利を得るとは小賢しい真似をする。だが、そんなことをして只で済むとは思っていないだろうな。」
「え!?ちょ、歳?総司!?違っ・・・誤解だ!」
凄まじい殺気を立ち昇らせる三人を前に助けを求めるも、頼みの斎藤は赤面し固まっている。そして騒ぎの発端である山南は、どうせ面白がっているのだ。助けてくれる筈が無い。
そして、斎藤の足元で我関せずと蹲る猫の鈴がちりりと鳴って―第二幕が始まった。
「『問答無用。』ですよ。」
騒動はまだまだ終わりそうにない。
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