薄桜鬼 土斎メイン BL小噺 声優関連徒然日記 詳細はご挨拶からどうぞ
05/19
2025
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05/04
2009
前回の続きとゆうかオムニバス形式。
土×斎タグなのに副長出てません。
土×斎タグなのに副長出てません。
死番を終えて副長の元へ報告に向かう。
都を廻っていたときに見上げた月は仄白く輝いていたのに
今では蜜色に蕩け星明かりのない夜空に淡く滲んでいる。
風流を介する趣味など持ち合わせていないがこの月を肴に呑む酒はさぞ旨いだろう。
そんなことを思いながら皆が寝静まった縁をひたひたと歩く。
と、前方に長く伸びた影が揺らめいた。
間者が忍び込んだことを考え腰の得物に手を伸ばし
慎重に間合いを詰めれば相手も此方の殺気に気付いたようだ。
「だあれ?」
どこか媚を含んだような声色。この声は
「伊東先生。」
「あら、斎藤君じゃない。こんな時間までお仕事?」
「副長に報告がありますので。」
「そうなの。ご苦労様。」
上役からの単純な労い。
局長や副長からならば素直に受け取れる物がこの男からだと裏を勘繰らずにはいられない。
「伊東先生は何をしてらしたんですか。」
「私は単に寝苦しくって少し夜風に当たっていたんだけど、思いの外長く居過ぎたみたいね。
春とはいえまだ夜は冷えるわ。」
「風邪など召されませんようご自愛ください。」
「ふふ。ありがとう。でも、そういうあなたこそ気をつけてもらわないと。
あなたが体調を崩したら土方さんのお仕事も滞ってしまうでしょう。」
「お気遣いありがとうございます。
ですが、俺一人居なくなった処で副長の職務に影響が出るとは思えません。
それに、組を預かる者として体調管理は怠っていないつもりです。」
伊東の口から突然発せられた土方の名に必要以上に反応してしまう。
「それにしては随分と薄着ねぇ。夜着とはいえ冷えるでしょう。」
「俺は先程浴場で汗を流してきましたので。」
「あぁ、そうだったの。道理で・・・」
そう言って遠慮なく這う視線はまるで値踏みでもするようで嫌悪感を湧き起こす。
更に、それにしても・・・、と勿体付けるように口を閉ざした後に続けられた言葉。
「こんな夜更けに躯を清めて忍んで男の部屋に向かうなんてまるで伽に行く遊女のようね。」
明らかな侮辱。しかもそれは斎藤だけに向けられたものではないのだ。
言い知れぬ屈辱を受けながらも、主から前もって与えられた命を思えば事を荒立てる訳にもいかない。
込み上げる怒りが顔に出ぬよう耐える。
「副長は俺が慰めねば為らぬ程、餓えてはいませんよ。」
自分の口から出た言葉によってすっと胸が冷えていく。
土方さんが隊士の中でも特に目を掛けてくれているということは判っている。
自分達が上司部下以上の関係だということに今更否を唱えるつもりは毛頭ない。
だが、それが己の独り善がりではないと如何して言えるだろうか。
―ふふふっ。
ぐるぐると巡る暗い想像が途切れた。
勘えきれぬというようにわらう伊東の声が切れ切れに謝意を告げる。
ごめんなさい。あなたを苛めるつもりはなかったの。
確かに土方さんは大層おもてになるけれど、
「こんなに美味しそうな獲物を前に只見ているだけだなんて壬生の狼の名も形無しね。」
壬生狼はそういう意味じゃないだろう。
「でもほんとうに土方さんがあなたに興味がないっていうなら、代わりに私が頂いちゃおうかしら。」
そうよ。それがいいわ。
と自分1人で納得してしまうのに慌てて反論する。
「戯れはお止しください。」
「あら。私は本気よ。」
悪戯に含み笑う様からは本心が掴みきれない。
矢張りこの人は苦手だ。
こんな無駄話をしている間にも待ち人は痺れを切らしていることだろう。
「そろそろ失礼します。」
「えぇ?もう行っちゃうの?」
「次はもっとゆっくりお話しましょうね。」
ひらひらと手を振る男に礼をして先を急ぐ。
これから長い付き合いになるだろうことに胸中深く嘆息しつつ―。
都を廻っていたときに見上げた月は仄白く輝いていたのに
今では蜜色に蕩け星明かりのない夜空に淡く滲んでいる。
風流を介する趣味など持ち合わせていないがこの月を肴に呑む酒はさぞ旨いだろう。
そんなことを思いながら皆が寝静まった縁をひたひたと歩く。
と、前方に長く伸びた影が揺らめいた。
間者が忍び込んだことを考え腰の得物に手を伸ばし
慎重に間合いを詰めれば相手も此方の殺気に気付いたようだ。
「だあれ?」
どこか媚を含んだような声色。この声は
「伊東先生。」
「あら、斎藤君じゃない。こんな時間までお仕事?」
「副長に報告がありますので。」
「そうなの。ご苦労様。」
上役からの単純な労い。
局長や副長からならば素直に受け取れる物がこの男からだと裏を勘繰らずにはいられない。
「伊東先生は何をしてらしたんですか。」
「私は単に寝苦しくって少し夜風に当たっていたんだけど、思いの外長く居過ぎたみたいね。
春とはいえまだ夜は冷えるわ。」
「風邪など召されませんようご自愛ください。」
「ふふ。ありがとう。でも、そういうあなたこそ気をつけてもらわないと。
あなたが体調を崩したら土方さんのお仕事も滞ってしまうでしょう。」
「お気遣いありがとうございます。
ですが、俺一人居なくなった処で副長の職務に影響が出るとは思えません。
それに、組を預かる者として体調管理は怠っていないつもりです。」
伊東の口から突然発せられた土方の名に必要以上に反応してしまう。
「それにしては随分と薄着ねぇ。夜着とはいえ冷えるでしょう。」
「俺は先程浴場で汗を流してきましたので。」
「あぁ、そうだったの。道理で・・・」
そう言って遠慮なく這う視線はまるで値踏みでもするようで嫌悪感を湧き起こす。
更に、それにしても・・・、と勿体付けるように口を閉ざした後に続けられた言葉。
「こんな夜更けに躯を清めて忍んで男の部屋に向かうなんてまるで伽に行く遊女のようね。」
明らかな侮辱。しかもそれは斎藤だけに向けられたものではないのだ。
言い知れぬ屈辱を受けながらも、主から前もって与えられた命を思えば事を荒立てる訳にもいかない。
込み上げる怒りが顔に出ぬよう耐える。
「副長は俺が慰めねば為らぬ程、餓えてはいませんよ。」
自分の口から出た言葉によってすっと胸が冷えていく。
土方さんが隊士の中でも特に目を掛けてくれているということは判っている。
自分達が上司部下以上の関係だということに今更否を唱えるつもりは毛頭ない。
だが、それが己の独り善がりではないと如何して言えるだろうか。
―ふふふっ。
ぐるぐると巡る暗い想像が途切れた。
勘えきれぬというようにわらう伊東の声が切れ切れに謝意を告げる。
ごめんなさい。あなたを苛めるつもりはなかったの。
確かに土方さんは大層おもてになるけれど、
「こんなに美味しそうな獲物を前に只見ているだけだなんて壬生の狼の名も形無しね。」
壬生狼はそういう意味じゃないだろう。
「でもほんとうに土方さんがあなたに興味がないっていうなら、代わりに私が頂いちゃおうかしら。」
そうよ。それがいいわ。
と自分1人で納得してしまうのに慌てて反論する。
「戯れはお止しください。」
「あら。私は本気よ。」
悪戯に含み笑う様からは本心が掴みきれない。
矢張りこの人は苦手だ。
こんな無駄話をしている間にも待ち人は痺れを切らしていることだろう。
「そろそろ失礼します。」
「えぇ?もう行っちゃうの?」
「次はもっとゆっくりお話しましょうね。」
ひらひらと手を振る男に礼をして先を急ぐ。
これから長い付き合いになるだろうことに胸中深く嘆息しつつ―。
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