薄桜鬼 土斎メイン BL小噺 声優関連徒然日記 詳細はご挨拶からどうぞ
05/19
2025
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09/21
2009
序。
続編は今月中になんとか。
斎藤さんと或る女性(ご想像にお任せ)。
男と女。
揚屋の一室で行うことなど只一つ。
しかし、男は一人手酌で黙々と盃を空け、茫と窓の外を眺め遣るばかり。
対して、女は胡弓を奏でながらも具に男の挙措を窺がっている。
登楼して優に一刻を回って尚、男は女に手を伸ばそうとはしない。
そんな男に他の妓は愛想を尽かして一人また一人と去っていった。
男は金回りこそ良かったが世辞の一つも言わぬ。
それどころか口すら碌に開こうとせぬ。
そんな男が相手では幾ら客とはいえ誰が好んで共寝しようと思うか。
況して妓たちが男を避ける理由はそれだけではない。
いったい誰が言い始めたものか、男には酒乱の気があるという。
量こそ並外れて呑むものの、酔って狼藉を振舞うことはおろか酔客に絡まれてさえ悶着を起こすことなく切り抜けるあの男が、と女は他の妓たちの言葉を聞き流した。
しかし女は見てしまった。
強かに呑んだ男の手がぞろり、と床を這う様を。
唯それだけ。
その動きが女の視線をそこに縫いとめたかのように離さない。
黒衣からのびた手は酒精が廻っているとは思えぬ程に皓い。
けして見惚れたわけではない。
女の背をぞく、と這いあげるものは寒気にも似た恐怖とそれを凌駕するほどのおぞましさだ。
人殺しの手。
男はその手で幾つもの命を奪ってきたのだ。
その手が今、新たな獲物を求め彷徨っている。
殺される。
そう思った。
それでも女は逃げることも助けを呼ぶこともできない。
視線すら離せないのだ。
均衡が崩れたのはどれほどの間をおいてか。
女の不躾な視線に気付いたか、男の指がひくりと震えた。
そして男は揃えた膝の上に手を置き、更に右手で覆い握り締めた。
まるで白刃を鞘に納めるように。
左手が見えなくなったことで女の緊張も解けた。
詰めていた息を吐き、渇いた口内を唾を飲んで湿らす。
自由になった視線でふと男の面を盗み見る。
それは女のなけなしの意地だった。
しかし半ば予想した通り、男は女の存在など歯牙にも掛けぬとでもいうように互いの視線が交わることは無い。
そのことが女には耐えられぬ程に口惜しい。
こうなれば根比べとばかりに男の横顔をひたと見据える。
そして、女は気付いた。
男の伏せられた目許にほんのりと朱が差しているのを。
今度こそ、女は男に魅せられた。
果敢無くも愚かな蝶は未だ囚われたまま・・・
揚屋の一室で行うことなど只一つ。
しかし、男は一人手酌で黙々と盃を空け、茫と窓の外を眺め遣るばかり。
対して、女は胡弓を奏でながらも具に男の挙措を窺がっている。
登楼して優に一刻を回って尚、男は女に手を伸ばそうとはしない。
そんな男に他の妓は愛想を尽かして一人また一人と去っていった。
男は金回りこそ良かったが世辞の一つも言わぬ。
それどころか口すら碌に開こうとせぬ。
そんな男が相手では幾ら客とはいえ誰が好んで共寝しようと思うか。
況して妓たちが男を避ける理由はそれだけではない。
いったい誰が言い始めたものか、男には酒乱の気があるという。
量こそ並外れて呑むものの、酔って狼藉を振舞うことはおろか酔客に絡まれてさえ悶着を起こすことなく切り抜けるあの男が、と女は他の妓たちの言葉を聞き流した。
しかし女は見てしまった。
強かに呑んだ男の手がぞろり、と床を這う様を。
唯それだけ。
その動きが女の視線をそこに縫いとめたかのように離さない。
黒衣からのびた手は酒精が廻っているとは思えぬ程に皓い。
けして見惚れたわけではない。
女の背をぞく、と這いあげるものは寒気にも似た恐怖とそれを凌駕するほどのおぞましさだ。
人殺しの手。
男はその手で幾つもの命を奪ってきたのだ。
その手が今、新たな獲物を求め彷徨っている。
殺される。
そう思った。
それでも女は逃げることも助けを呼ぶこともできない。
視線すら離せないのだ。
均衡が崩れたのはどれほどの間をおいてか。
女の不躾な視線に気付いたか、男の指がひくりと震えた。
そして男は揃えた膝の上に手を置き、更に右手で覆い握り締めた。
まるで白刃を鞘に納めるように。
左手が見えなくなったことで女の緊張も解けた。
詰めていた息を吐き、渇いた口内を唾を飲んで湿らす。
自由になった視線でふと男の面を盗み見る。
それは女のなけなしの意地だった。
しかし半ば予想した通り、男は女の存在など歯牙にも掛けぬとでもいうように互いの視線が交わることは無い。
そのことが女には耐えられぬ程に口惜しい。
こうなれば根比べとばかりに男の横顔をひたと見据える。
そして、女は気付いた。
男の伏せられた目許にほんのりと朱が差しているのを。
今度こそ、女は男に魅せられた。
果敢無くも愚かな蝶は未だ囚われたまま・・・
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