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薄桜鬼 土斎メイン BL小噺 声優関連徒然日記 詳細はご挨拶からどうぞ
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2025

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この組み合わせ好きー。
兄妹には甘いはじめさんって萌える。

「あ・・・」
零れ落ちた声に作業の手を止めれば先輩は口元を手で押さえている。
何事かと伺う視線になんでもないと首を振ることで応える一方、
胸ポケットから取り出したティッシュを唇に押しあてた。
「口唇、切れたんですか。」
「・・・ああ。」
「先輩、リップクリームは?」
「持ってない。」
「でしょうね。」

そういう人だ、この人は。
服装や髪形、身嗜みという部分では潔癖とさえいえる程に気を使う癖に
それ以外の部分では無頓着というかなんというか・・・隙だらけなのだ。
そして、そういったことが対人関係においても往々にある。
品行方正を旨とする堅物優等生は時折、とんでもない天然っぷりを発揮する。
何より性質が悪いのが本人に自覚が全くないという事。
確かに先輩の周りには破天荒な奴等ばっかりだけど、
だからって自分が普通だなんて思うのは見当違いも甚だしい。
先輩だって充分向こう側の一員だ。
もちろん、それは僕自身も同じではあるけれど。
でも、そんなだからみんな先輩から目が離せないんだってことにいい加減気付いてほしい。

「仕方ないんで僕の貸してあげます。色付きとグロスタイプ、どっちがいいですか?」
「・・・いらん。このくらい放っておけば治る。」
「わかりました。そんなこと言う謙虚な先輩には出血大サービスってことで両方塗ってあげますね。」
「南雲っ!」
「後輩の好意を無碍に断るのは先輩失格ですよ。」
「だったらせめて薬用のものを・・・」
「残念ですが今の手持ちはこの2つです。」

とっておきの笑顔で迫れば心底困った顔で見上げられる。
意外と押しに弱い所も先輩の弱点。
まぁ、僕の場合は千鶴と同じ顔という武器もあるんだけど。
千鶴と2人で買ったお揃いのリップクリーム。
ドラッグストアで売ってる定番品は値段の割りにきっちり仕事してくれる。
蓋を開けてくるりと回せば現われる桜色を右手に、先輩の頬を左手に包む。

「ほら、先輩。塗ってあげますからちょっと口開いてください。」
「・・・どうして、俺が・・・・・・」
「先輩。あーーーん。」
「・・・・・・・・・っ」

最後の抵抗とばかりにきつい眼差しで睨まれるのを笑顔で受け流す。
そんな攻防が数秒続き、結果折れるのはいつも通り先輩で。
溜息一つ零した後にゆるりと薄く口を開いた。

あ・・・キスしたいかも。

所在無く彷徨った双眸は伏せた目蓋に覆われ、代りに思いの外長い睫が影を落とし、
普段色悪い口唇は滲んだ血のせいでうっすらと紅く染まっている。
薄く開いた口唇がまるで誘っているようだと身勝手な錯覚に陥りそうだ。

「・・・南雲?」

ああ・・・。はいはい。わかってますよ。
そうだ。見蕩れてる場合じゃない。
迫るのは塗り終わってからでもできる。
今を逃したら次にいつこんな好機が巡ってくるか。

「すぐ済みますから、おとなしくしててください。」

宣言通りにリップクリームを滑らせ、ティッシュで軽く油分を抑えグロスを中心に重ねる。
きっと似合うと確信していた。でも、まさかこれほどとは・・・
ふっくらと色粧いた口唇に吸い寄せられた視線が離せない。
それは単に予想を超えてたってだけじゃなくて、先輩だから。
普段の虚飾を嫌う先輩の本質を知るからこそ。
それなのに、今こうしてるのは僕の言葉を受けてくれたからで・・・すごく嬉しい。

「南雲?終わったか?」
「一応は。でも、ついでだから口唇だけじゃなくてアイメイクもしません?」
「却下。」
「えー・・・・・・。じゃあ、かわりにキスしましょうよ。先輩。」
「ふざけんな。」
『!?』

突然降ってきた声に驚く間に声の主、土方教諭は先輩を我が物顔で引寄せた。
一体どの辺りから聴いていたのか・・・めちゃめちゃ怒っている。当然か。

「ちぃっとばかし、悪ふざけがすぎるぞ。南雲。」
「・・・はーい。」
「お前もお前だ。もっと危機感を持て。無防備すぎる。」
「・・・・・・・・・はい。すみません。」

あーぁ。いいところだったのに。
先輩も何か言いたげだけど、その剣幕に圧されてか素直に謝る。

「あの・・・先生。」
「ん?」
「口を拭ってきますから・・・その、離してください。」
「だめ。」

瞳に哀願の色を浮かべて見上げられながら、無碍にもそれを一蹴する。
囲いこむ両腕は言葉以上に雄弁に逃がすつもりがないと告げている。
先輩はそれに抗うなんてできなくて・・・
それでも顔を伏せ、ふるふると首を振ることで意を示す。
しかし、相手はそんな小さな抵抗すら許さなかった。
頬を包む手に導かれるままに視線をあわせる。

「・・・そんなに・・・みないでください・・・」
「南雲には良くて、俺には見せられないか?」
「・・・って、はずかしいんです・・・」

消え入る声に破顔する。
鬼教師のそんな顔が見られるのは極々少数の者に限られる。
その中に僕が含まれるのは不可抗力であり、誠に遺憾だ。

「よく似合う。」

艶やかな口唇を指腹で擦り、黒髪に隠れた耳を露わに何事か囁けば、
桜色に染まった先輩は崩れるように胸の内深く納まった。

「だめ、ですよ。」
「わかってる。後でな。」



・・・・・・・・・あーもうっ

「先生、なんか気分悪いんで今日は先帰ります。」
「ん?・・・あぁ、気をつけて帰れよ。」

あんたにだけは言われたくない。送り狼確定の不良教師め。
それでも僕は大人だから喉下まで出掛った言葉をグッと呑み込むのだった。
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